児童養護施設で生活する子どもたちはは通常、特別な場合を除いて18歳(高校卒業)を目安として施設での
生活を終え、家庭復帰や自立生活という新たなスタートを切ります。
進学や就職という生活環境の変化だけでなく、同時に住環境の変化、それに伴う生活全てが一変すること
に戸惑う子も少なくありません。しかし、多くの子が家庭等からの支援を望めず、それまで頼りにしていた
施設職員にも「園にいる子のことで忙しいだろうから」と遠慮してしまい、孤立してしまいがちな現状が
あります。そんな現状を打破したい、子ども達にとって帰るべき”居場所”を作りたいとの想いから始まったのが
下鴨ベース生活塾という取り組みでした。
地域小規模児童養護施設こがもの家における家庭的な環境での実施を経て、本体施設別棟(旧理事長宅)での活動に実施場所を移しています。卒園を控えた高校生たちを対象に施設退所後の生活を捉え、共に考える機会を設けています。それは日常生活(インケア)の中でも行っていたことではありましたが、施設を巣立った子どもたちが少しでも社会生活で困らないために、自身の生活を「主体性をもって考える機会の提供」が施設生活において、より必要であったことによります。
そこでは職員は共に考える大人として参加します。社会生活の先輩として話を聞いて疑問を解決したり、自身の体験を話すなどアドバイスをすることもありますが、第一に子どもたちの主体性を尊重する場としています。退所した子どもたちの先輩が来訪して参加してくれることもあります。
家庭的な環境を活かしたケアは大舎制施設(集団)生活にはない効果があります。施設退所に向けた支援(リービングケア)をベースケアと位置づけて、よりインケアの中に定着化させていくことを目指しています。
また、アフターケアとして退所した子どもたちを迎え入れる場所としてもベースケアの場所を定着化させていきます。
ここでの『ベース』という言葉は「基盤となるもの」、そして「塁(進むこともでき、戻ることもできる場所)」という意味を持っています。
京都中小企業家同友会(以下:同友会)の皆様に協力頂き、平成25(2013)年度より、自立支援の取り組みを実施しています。参加は子どもたちの意思を尊重します。
様々な職業のプロである同友会の皆様が毎月施設に来園され、子どたちと食事を摂りながらのコミュニケーションを経て、子どもたちとの懇談会の機会を持ちます。そして夏休み(8月)と春休み(3月)にそれぞれの企業実習に子どもたちを迎え入れていただきます。実習期間の翌月には実習報告発表会を行い、子どもの体験に基づいた発表を皆で褒めるとと共に分かち合います。
年数を重ね、この取り組みが子どもたちの施設生活の中に定着しました。自立支援としての側面だけでなく、同友会の皆様の「子どもたちの応援団」としての熱く温かい想いが子どもたちのインケアからアフターケアに至るまでの社会資源となって存在しています。